つたえる
〈機関紙no.5インタビュー企画〉エスウッド/想いをつなぐ企業文化をつくる
2024.12.03
財団のこと、まちのこと、文化のこと、様々な情報を発信している機関紙『WHAT’S BUNKA』。no.5のインタビュー企画「ところでかかみがはらのみなさん「文化」ってどんなイメージですか?」では各務原にゆかりのある経営者、大学生、国内外からの移住者の方々へ、「文化」に対するイメージやご自身の活動についてインタビューを行いました。ここでは紙面では記載しきれなかった部分を加えご紹介します。
《ものづくり×文化》
株式会社エスウッド 代表取締役 長田剛和さん
各務原の特色の1つ「ものづくり産業」。各務原と聞くと航空産業を想像することが多いですが、木材団地があることをご存知でしょうか?今回は、間伐材や廃棄素材を活用したストランドボードの開発・製作を行っている「株式会社エスウッド」の代表取締役・長田 剛和さんへお話を伺いました。
オーダーメイドのボード製作
ーエスウッドはどんな会社でしょうか?
岐阜の地域性でもある森林を活用することを目的にエスウッドは創業されました。経営理念「想いを繋ぐ」のもと、「環境保全・まちづくり・教育」の3つを軸に、間伐材や樹皮を自分達が持つ技術で、ストランドボードを中心に、使えるカタチに生まれ変わらせ、社会貢献することを大切にしています。
経営理念を実現するために、工場の他に「ラボ」を備えています。企業さんと一緒に、本来廃棄されるはずだったコーヒー豆のかす、小豆の皮、鉛筆製造時の木くずからボードを作成して什器をつくったこともありました。これまではお金を出して破棄すれば問題が無かったことが、最近では、捨てられるモノが最終的にどのように還元されているのか、注目される時代となりました。 私たちは、顧客の方針や考えをヒアリングし、オーダーメイドでボードを製作しています。ホームセンターの何倍もの金額になりますが、それでもお客さんにとっては替えの利かない材料になるんですよね。
記憶に残るものには「人」がいる。
ーエスウッドに入社するきっかけは何だったのでしょうか?
エスウッドに入った理由は、先代の人柄だけですね。前職で、上海で働いてた時に、日系の中小企業への情報提供や現地でのサポートなどの支援を行っていました。取引先の中にエスウッドもあり、そこで先代と知り合い、この人の元で働いてる人は幸せだなと思いました。ある時、企業のマッチングイベントで失敗をし、大半がクレームだった中、先代の社長だけが「長く仕事をやっていると、そういう事もある。次回は、また考えてやっていこう」と、唯一、前向きな言葉をかけてくださいました。年に数回中国を回ったりと、人柄は知っていたし、エスウッドがどういう商品を製作をしているのか知っていました。先代に誘っていただき、エスウッドの経営状況は知らなかったのですが、入社しようと思いました。
ー元々、森林関係の業界に興味があったわけではなく、先代の人柄に惹かれた事が、入社への決断に大きく影響したのですね。
人柄ですね。今も思いますけど、やっぱり「人」だと思うんですよ。周りにいる仲間や友達が幸せになったり喜んだりする瞬間を振り返った時に楽しかったと思うように、記憶に残るものには「人」がいるなと思います。エスウッドへ入社後、最初に所属した開発部がすごく楽しかったんですよね。先代も指示をするタイプではなく、お客さんが何を求めているのか聞いて、あとは自由にやらせてもらえました。経験が浅かったので、結構ミスはしましたが(笑)。
ー自由にやってみて、失敗も含めて学び、次に活かしていく事を大切にされていたのですね。
多分そうだと思いますね。自由にやらせて、責任は自分がとる。 経営者としての覚悟を感じました。今、自分が経営者の立場となり、足りてない部分だなと感じています。最近は少なくなりましたが、あちこちブレることが多かったですね。
新しく創られるものも、無くなるものも、記憶として文化となる
ー「文化」と聞いて、何を思い浮かべますか?
社会の文化、地域の文化、企業の文化、家庭の文化、学校の文化など、1つの集合体に文化があると思います。そこには、やっぱり「人」がいるんですよね。違う言い方をすると、地域ごとの習慣や伝統のような感じですよね。「文化」はすぐ生まれるものではなく、人であったり、自然や地域の環境が、長く次の世代へと繋がれていった結果、いつの間にか「文化」ができていくのでしょうね。
そして、文化の喪失も、寂しいですが、新しい文化づくりだと感じています。自分がここ1.2年で感じたのは、 夏休みの子どものラジオ体操ですね。自治会で賛否をとると賛成派がとても少なくて。新しく創られていくものばかりではなく、時代の変化で無くなった結果にある姿も「文化」になるのでしょうね。自分は記憶や思い出として「文化」が残ったりするのかなとちょっと思いました。
ーすぐ結果が出なくても、将来につながる。その考え方が、お仕事や、子ども達への教育にも繋がっているように感じました。
去年、取り組んだ高校生の企画も、単発でやったら文化にはならなくて、 自分は経営者として企業文化にしていきたいと思っています。社員がお手伝い感覚ではなく、「エスウッド=○○をやる会社。」と思える企業文化を当たり前のようにしていきたいなと思っています。
最初は、自分から発信し続け、何年かかけて「文化」を創っていきたいですね。究極はですけど、授業で一緒になった高校生が大学生になって 手伝いに来てくれるとか。勉強にもなり、アルバイトにもなるような光景も描いています。このエリアが木材団地だということがあまり知られていないので、地域に知ってもらい若者が集まる場になったらいいですね。
ー長田さんのビジョンはすごいですね。土台を作るのは大変だけど、最初の努力が数年後に繋がっていきますよね。
一番気を遣う必要があるのは、仲間集めだと思うんです。 これを、1.2人で取り組んでいると、どうでもいいかとなってしまうんです。だから、共感する仲間が増えていくことが大事なんです。そこで最近、地域の飲食店と繋がりを広めることを考えています。例えば、喫茶店とか。
ー喫茶店というと、人が集まる場所で地域の情報が集まる公民館というイメージがありますね。
高校生が地域の魅力を知ることをテーマに、グループごとに幼稚園や飲食店に分かれて、先生や店員さんとお話をしたりして、それぞれの声を聴いてターゲットにあった製作をする活動がしたいですね。
活動を通して地域に愛着を持ち、 若い彼ら彼女らが、大人になって久しぶりに地元に戻って来た時に「あの時の場所に行こうかな」みたいな理由づくりになったらいいなと勝手に将来像を描いています。きっかけづくりは、日々考えてます。若者は財産ですから。人生に一度は外に出て客観的に生まれ育った地域を見ることが「ここが好きだ」「ここをこうしたら良くなるんじゃないか」などの発見につながると思います。
“ひとの想い”が次世代につなぐもの、残すもの
ー長田さんにとって「文化」とは?
「“ひとの想い”が次世代につなぐもの、残すもの」だと思います。
経営理念である「想いをつなぐ。」に自分がしっくり来たので、こういう話ができていると思います。失礼ながら、代表になった8年前は、理念もビジョンもなかったので。 会社を続けるために、目先の利益ばかり考えていました。でも、そうした経営を続けていると人生はつまらないのではと最近は感じています。
一番実感したのが、4年前の火災で工場の7、8割が燃えて、1年半の休業期間ができた時ですね。そこで、人生について考える機会が生まれて、とどまることも大事だなと感じるようになりました。代表になった時は事務所にほとんど居なくて、半年以上は東京や大阪を拠点に売るための営業をしていました。
ー今とは真逆な生活だったんですね。
失礼ながら、4年前の火災に遭うまでは各務原市さんと一緒に仕事をして何かメリットになるのか、売り上げになるのか、そういう感じで思っていましたね。今の結果が良かったかどうかは10年ぐらい経ってからしか分かりませんが、今は、理念を軸にして、よりよい社会や地域を創っていければと思っています。